高校生の頃、わたしは自らの意思で都立高校(全日制)から通信制の高校に転校した。

当時の担任が非常に驚いていたことは忘れらない。

「わたしがこれまでに見てきた転校する生徒像と違うから、よく理解できない。成績も問題ないし、出席率もいい。このままいけば、大学も名の通ったところも狙えると思う。それなのに、なぜ?」

何度も聞かれたし、両親も学校に呼び出されて面談もした。

その時、わたしはうまく言語化することができなかったけれども、ルッキズムや美の基準、周りの子は当たり前に大学や留学の話をしている中で感じた経済格差*1、学歴主義に感じる暴力性などが心の中で積み重なっていたから、限界を迎えていたのだと思う。

姉が通信制高校に通っていたこともあって、定期的に学校に行きつつも、ゆるやかに生きている姿を見ていたので、わざわざこの苦しみをあと2年間続ける必要はないだろうと考えた。

この時、人生の主導権は自分の手の中にあると思っていた。

通信高校に入学したことがきっかけで、試しに陸上部の見学に行ってみた。

ガヤガヤと走りながら、学校から近くの大学にある土の陸上競技場まで走って、雑談をしながらストレッチ。

そして顧問の先生に言われるがまま、200mを10本走るメニューにわたしも参加した。

あの日初めて陸上競技場で走った時、今まで頭の中にあった悩み事や、グルグル回っていた思考が止まった。

一定のリズムで、呼吸をする音しか聞こえない。